| 波面センサーと屈折検査 |
III.波面光学を応用した眼鏡レンズ
高次収差の有無や種類・程度が、2000年頃から臨床において測定可能になり、それに伴い、波面解析されたデータを基にした眼鏡レンズ開発が進んだ。Opthonic Inc.は、2005年に眼の手術以外の利用法として、波面データに導かれたカスタムメイドの単焦点眼鏡レンズを、そして翌年には累進多焦点眼鏡レンズの販売を開始した。両レンズとも Ophthonix's Z-viewと呼ばれる波面アパロメーターによって測定された個々の患者の光学データに基づいてカスタム製造される(図3−1)。

このタイプのレンズでは、真正面などの一定の方向に対して高次収差を低減することができるが、視線の方向が変わった場合、高次収差の補正程度が変わるなどの問題が生じる。コンタクトレンズや眼内レンズのように眼の動きに合わせて位置を変えるレンズであれば、どの方向でも高次収差を補正することは可能である。iZon レンズは、独特な演算法を利用してレンズ後面に適切な球面・シリンダー(Sphero-cylindrical)面を設計することで、個々の患者のiPrint(高次収差パターン)に対応できるようになった。
この iZonレンズは本邦で販売されてないが、カールツァイスの i.Scription化されたレンズは、波面センサーデータを反映して度数を最適化するように作製され、すでに国内で販売されている。このレンズは、ProgressiveIndividual2レンズと呼ばれている。このレンズは、フリーフォームによる内面累進+内面非球面設計で、一人ひとりの個別データに基づいて個別設計された、フルオーダーメイドレンズである。外面を球面化することで、フリーフォームによる内面のデザインは制限されず無限大に広がり、自由度が高いため、0.1mm単位で累進帯長を選択でき、様々なフレームに適応する。
また、フィッティングパラメーターを 0.1mmの高精度で測定し、レンズ設計に反映させるために、i.Terminal2という測定装置が使われる。この装置は両眼 PD、片眼 PD、アイポイントの高さ、角膜頂点間距離、前傾角、そり角、フレーム幅、フレームの天地幅、ブリッジ幅などを 0.1mmの精度で測定する。i.Terminal2のような装置を使うことにより、正確にフィッティングされたパラメータをレンズ設計へ反映させ、より個別に設計されたフルオーダーメイドが可能となる(図3−2)。このようなレンズが今後QOV(視覚の質)を高めるレンズとして使われるようになると予想される。

iZonレンズは、個々の高次収差に基づいて設計される眼鏡レンズだが、累進レンズによく発生する収差を補正する目的で波面光学技術を応用する試みも始まった。それは、エシロールの Varilus Physio と Physio360 レンズである。Varilus Physio レンズの特徴をまとめると次のようである。
どんな最良の累進多焦点レンズでも、周辺部を通過する光は像の歪みを生じさせ、視覚の質が低下する。Varilux PhysioやPhysio360のレンズは、WAVE(Wavefront Advanced Vision Enhancement)と呼ばれる技術でこのような歪み(特に、コマ収差)を減少させるデザインとなっている。このデザインによって、レンズを通過する波面の形をコントロールして収差を補正している。報告によると、このタイプの累進多焦点レンズは中心部及び周辺部の見え方を向上させ且つ30%の視野拡大、コマ収差のよりよいコントロール、そしてすべての視界においてよりよい視力が可能なレンズである。Varilux Physioは2006年に発売され、エシロールの旗艦的なレンズの一つである。
(補足:i.Scription とは)
カールツァイスが開発した i.Scriptionは、i.Profiler Plusで測定した全眼球の波面収差データと自覚的屈折データを考慮し、ツァイス独自のアルゴリズムにより、S.C.A(球面、乱視、乱視軸)値を微調整(補正)することで、網膜上の像を最適化することができる。この方法で出された処方度数は、0.01D の精度でレンズ度数を作製することができ、よりカスタム化された処方となる。QOV(視覚の質)を要求するお客さんへの対応には、不可欠な方法の一つになってくると予測される。
(補足:高次収差関連のレンズを扱う会社のホームページ)
・Ophtoronix: http://www.izonlens.com/
・エシロール: http://www.nikon-essilor.co.jp/
・Zeiss: http://www.zeiss.co.jp/professional