光の波動性
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4.偏光

 偏光とは

 干渉・回折の現象は縦波でも横波でも生じるが、光が横波であることを示す現象がある。それが偏光である。図45に示すように、二枚の偏光板を平行におくと、一枚目の偏光板を通った光線は二枚目も透過する。一方、二枚の偏光板を直交しておくと、一枚目の偏光板を通った光線は二枚目の偏光板を透過しない。これは、偏光板が特定の振動方向の光線のみを透過するからである。一枚目の偏光板で縦方向に振動する光のみが選び出され、二枚目の偏光板が平行の場合は透過し、直交の場合は透過しない。実際の偏光板では図46のようになり、平行に置いた場合、光が透過し、直交して置くと、透過しないので暗くなる。

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図45 偏光板による偏光。
偏光板を平行におくと、一枚目の偏光板を通った光線は二枚目も透過する(上図)。偏光板を直交しておくと、一枚目を通った光線は二枚目の偏光板を透過しない。

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図46 2枚の偏光板を平行(左)、直交(右)して置いたときの光の透過の様子。平行に置いた場合は、光が透過してしているが、直交しておくと透過しない。(Photo 西谷)

 反射による偏光

 光は反射すると偏光する。図47の画面中央のガラス窓を見ると、右側の写真では明るい反射光があり、左側の写真では暗くなっている。偏光板には水色の印が付いており、90°回転していることがわかる。このように反射光は偏光している。夏の野外や冬のスキー場などでは反射光が強いので、偏光サングラスを装用する。サングラスの偏光板が左側の写真のような関係になっていれば、反射光を防ぐことができる。人は体や頭を動かすので、いつもこのような関係になっているとは限らないが、偏光板は大部分の反射光を弱くする。

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図47 反射による偏光。偏光板を通して風景を眺める。画面中央の手前の建物の外へ押し出した窓ガラスを見ると、右側では反射光が明るく、左側では暗い。偏光板が左右で90°回転していることを考えると、反射光は偏光していることが分かる。(Photo 西谷)


 散乱による偏光

 光が空気中の微粒子によって回折を受けて、光の進行方向が種々に曲げられる。このような現象を散乱という。この散乱によって、光が偏光される。太陽からほぼ 90°方向の空を偏光板を通してみると(図48)、偏光板の回転方向によって、明るくなったり暗くなったりする。これは光が偏光しているからである。空が青いとか夕日が赤いのは散乱(レーリー散乱という)によっている。

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図48 散乱による偏光。太陽からほぼ90°方向の空を偏光板を通してみる。左側では空は明るく見えるが、左側では暗く見える。ここでも、左右で偏光板が90°回転していることに注意。(Photo 西谷)

 液晶の偏光

 液晶には偏光が使われている。ノートパソコンの液晶画面に偏光板を置いてみる(図49)。上の写真では偏光板を通して画面が見えているが、下の図では画面が見えない。偏光板は 90°回転されているので、画面からの光は偏光であることが分かる。スキーにいって、サングラスをかけると携帯電話の画面が真っ暗に見えることがある。これは携帯の画面に液晶が使われているからである。

0125 図49 液晶画面の偏光。液晶画面には偏光が使われている。上の図では偏光板を通して画面が見えるが、偏光板を90°回転すると画面は見えなくなる。(Photo 西谷)


 偏光による干渉

 偏光は、同じ方向の振動であれば干渉するが、振動方向が直交していると干渉しない。ここでは、偏光を干渉させてできるきれいな色を見ることにしよう。どうしてこのような色が生じるかは多少複雑なので、末尾に掲げた参考書2を見ていただきたい。

 二枚の偏光板の間にセロテープを対角線状に何枚も貼り付けた物をはさむ。セロファンは複屈折の性質を持っている。複屈折とは一本の光線が二つの光線に分かれて進む性質であるが、光の振動方向により屈折率が異なるからである。偏光を複屈折性の物質(ここではセロテープ)を通して、再び偏光板を通すとこの二つの光線の干渉により色づく(図50)。一方の偏光板を 90°回転すると、その色は補色となる。

0122 図50 偏光の干渉。セロテープを貼った板を2枚の偏光板の間にはさむと、その厚さに応じて色が付く。一方の偏光板を 90°回転すると、それぞれの補色に変化する。(Photo 西谷)


さらに学習するために

 一般に市販されている光学の本は、数学的な素養がないと読むことが難しい。
1.高校物理の教科書。
  波、光学の章が入門用参考書としては適当である。

 読み通すには難しいが
2.応用光学 I、II、 鶴田一夫、培風館
 にはほぼすべてのことが書いてある。


------  おわり  --------

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